
フェラーリ初EV「Luce」デザイン失敗の4つの要因#
フェラーリが初めて発売した電気自動車が、これほどまでにインターネット上で嘲笑されるとは誰が予想しただろうか?
この記事でわかること:
- Luceのデザインがなぜ批判を受けたのか
- Jony IveとLoveFromの関与が意味すること
- 業界専門家・元会長・政府関係者の具体的な反応
- 株価への影響とフェラーリ側の姿勢
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フェラーリがどう判断を誤ったのかを整理することで、ブランドとデザインの関係を深く理解できる。
【結論】Luceが批判された4つの主な要因#
忙しい読者のために、まず核心をまとめる。
- ブランドとの乖離:フェラーリらしい鋭さや攻撃性がデザインから消えた
- 異分野デザイナーの起用:工業デザインと自動車デザインの違いが露呈した
- 市場・顧客層の混乱:スポーツカーでも都市型EVでも高級車でもない曖昧な立ち位置
- 時代背景との衝突:富の格差が可視化された時代に、高額なのに「平凡」に見えるデザインが反発を招いた
詳細は以下の各セクションで解説する。
フェラーリ「Luce」とは?基本情報の整理#
Luceはフェラーリが初めて発売した完全電気自動車だ。
主な仕様(ソース記載分):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モーター数 | 4基 |
| 馬力 | 1,035馬力 |
| 航続距離(目安) | 約500km |
| 価格 | 64万ドル以上 |
| シート数 | 5人乗り(フェラーリ初) |
| デザイン担当 | LoveFrom(Jony Ive、Marc Newson) |
Luceはフェラーリ史上最も全長が長い車でもある。
従来のフェラーリが持つシャープで攻撃的なラインは採用されず、なだらかな空力形状が選ばれた。
フロントには従来のグリルの代わりに「Sダクト」と呼ばれる空気取り込み口が設けられており、その開口部は腕が通るほど大きいという。
キャビン(客室)部分はダークな「ガラスハウス」のように見え、それが別体のアルミシェルの中に収まっている構造に見える、と記事は説明している。
次のセクションでは、このデザインに対して業界の専門家たちがどう評価したかを見ていこう。
デザイン専門家・業界関係者の評価#
このセクションでは、各方面からの具体的な批判と評価をまとめる。
自動車デザイナーの視点#
Lucid(ルーシッド)のデザイン&ブランド担当SVPであるDerek Jenkins氏はこう述べた。
「ブランドのアイデンティティ、期待値、デザインがいかに密接に結びついているかを、この反応は示している。テールライト、赤のカラーオプション、ロゴ——この3点以外に、外観からブランドを感じさせる要素はない。プロポーション、視覚的な俊敏性の欠如、パフォーマンスの表現——すべてが欠けている。フロントフェイスは識別できない。ブランドとのミスマッチだ」
ミシガン州のCollege for Creative Studiesで交通デザインの学科長を務めるRaphael Zammit氏の評価はさらに厳しい。
「残酷なほど凡庸だ。まるでAIがデザインしたかのようで、多くの異なるテーマを数学的に平均したような見た目をしている。アイデンティティが不気味なほど感じられない」
Zammit氏はさらに、Luceを「スポーツカーでも都市型EVでも高級車でもない」と指摘した。
LoveFromへの過信について、Zammit氏はこう言及した。「戦略が非常に曖昧だ。LoveFromに少し丸め込まれ、売り込まれすぎたのかもしれない」
工業デザインと自動車デザインの本質的な違い#
Zammit氏は重要な指摘をしている。
工業デザインと自動車デザインは異なる分野であり、一方のスキルが他方に常に通用するわけではない。
Jony IveがApple iPhoneのデザインで「物理的な端末を消す」ことに成功したのは、デジタルコミュニケーション機器として100%適切な判断だったとZammit氏は認める。
しかしフェラーリはiPhoneではない。
Luceのインテリアはアナログとデジタルの融合として一定の評価を受けているが、Zammit氏は「そのインテリアの言語は、小型プレミアム市民車(Fiat 500など)にこそ似合う。50万ドルのスーパーカーには合わない」と述べた。
元会長・政府関係者の反応#
フェラーリの元社長兼会長であるLuca di Montezemolo氏は、Luceが「神話を壊すリスクがある」と警告し、「せめてあの車から跳ね馬のロゴを外してほしい」とまで発言した。
イタリアの交通大臣Matteo Salvini氏も同様の懸念を示した。フェラーリ側はいずれのコメントにも回答しなかった。
次のセクションでは、このデザイン批判が株価や企業動向に与えた影響を見ていこう。
株価・市場への影響#
デザイン批判は「炎上」にとどまらず、株式市場にも波及した。
- 発表翌日、フェラーリ株はミラノ市場で約8%下落
- 同日、ニューヨーク市場でも約5.3%下落
- アナリストは「デザインへの嫌悪感」と「R&Dコストおよび投資対効果への懸念」を下落要因として挙げた
ただし、フェラーリのCEO Benedetto Vigna氏は発表から数日後、「特に新規顧客からの関心は強い」と述べ、株価はその後発表前の水準に回復した。
S&P Global MobilityのアナリストであるStephanie Brinley氏は、「今回の批判は現在の経済・政治的な状況によって増幅されている」としつつ、「フェラーリの歴史全体から見れば一時的な出来事になるかもしれない。この車がフェラーリのレガシーを破壊する必要はない」と見解を示した。
なぜこれほど反発を招いたのか——時代背景との衝突#
Luceが発表されたタイミングは、富の格差と企業の行き過ぎが かつてないほど可視化・批判されている時代だ。
記事によれば、フェラーリはほぼ80年間、「手が届かないが誰もが憧れる」というブランド価値を保ってきた。
64万ドル以上という価格でありながら、見た目が量販車のように「平凡」に映る——この組み合わせが、既存ファンと新規ユーザーの双方から怒りを買った。
インターネット上では、Luceを掃除機、Apple Magic Mouse、日産リーフに例えるミームや批判投稿が拡散した。
「フェラーリはこれまでクラスを超えた「欲望」を売ってきた。Luceは価格はフェラーリのままで、見た目を均質化してしまった」(記事より)
中国市場への照準という見方#
記事はフェラーリがLuceを設計した背景に、中国市場の開拓という戦略的意図がある可能性を指摘している。
- 中国ではEVが主流であり、大型ガソリン車は高い税負担を受ける
- 中国の国内ブランドは大型のガラス面や最小限のデザインを持つウルトララグジュアリーEVを量産している
- フェラーリの中国向け販売シェアは近年低下傾向にある(詳細数値は元記事を参照)
Luceの「大きなガラス面」「ミニマル/マキシマルなインテリア」「議論を呼ぶエクステリア」は、西洋よりも中国市場の好みに沿ったデザインとも読める。
記事はこれをBMWの事例と比較している。BMWはキドニーグリルを大型化し西洋市場で批判を受けたが、当時のデザイン責任者が「中国では評価が高い」と認めた経緯があると報じている。
競合他社の反応も注目に値する。ランボルギーニのCEO Stephan Winkelmann氏は、Luceに直接触れることなく、「自社がEV計画を中止してプラグインハイブリッドに集中したのは正しい判断だった」と述べ、「革新はそれ自体のためや顧客への強制のためにすべきではない」とコメントした。
まとめ:フェラーリ「Luce」から見えること#
Luceの失敗は単なる「デザインの好み」の問題ではない。
改めて4つのポイントを整理する:
- ブランドとデザインは切り離せない:フェラーリに求められる「鋭さ」「攻撃性」「識別性」がすべて失われた
- 異分野の名デザイナー起用は両刃の剣:Jony IveのブランドはiPhone的な「消えるデザイン」に向いており、それがスーパーカーに転用された
- ターゲット戦略の曖昧さが致命的:スポーツカー・都市型EV・高級車のどれとも言えない立ち位置
- 時代の空気を読み誤るリスク:富の格差が争点化する時代における「高価格×平凡な外観」の組み合わせ
Luceがフェラーリの歴史にどう刻まれるかは現時点では不明だ。詳細な続報については元記事(The Verge)を参照してほしい。
出典:Abigail Bassett, “How Ferrari bungled the design of its first EV”, The Verge, May 29, 2026




