
LAPDがFlock Safetyとの契約を終了——その背景とは#
ロサンゼルス市警察(LAPD)が、ナンバープレート認識カメラを全米に展開する監視テクノロジー企業「Flock Safety」との3年間の契約を更新せず、期限切れをもって終了させたことが明らかになりました。LAPDは「市民の自由・市民権、とりわけプライバシーおよびデータ収集に関する深刻な懸念」を理由として挙げています。
詳細解説:なぜ契約が打ち切られたのか#
LAPDの公式見解#
LAPDの最高情報責任者(CIO)であるDean Gialamas氏は、「このデータ、プライバシー、セキュリティ、情報共有に関する懸念が、契約上の取り決めを通じて解消されるまで、Flockのサービス利用を一時中断するという困難な決断をLAPDは下さなければならなかった」と述べています。同警察はABC7およびロサンゼルス・タイムズを通じてこの方針を明らかにしました。
なお、Flock Safety社のカメラはLAPDが直接運用しているわけではなく、アトランタ(ジョージア州)に本拠を置くFlock Safety社が運用しているという点が重要です。契約失効後もカメラが引き続き録画を継続するかどうかは現時点では不明とのことです。LAPDはプライバシーやデータ保存に関する懸念に対応する新たな契約文言を模索しているとも報じられています。
Flock Safetyとはどんな企業か#
Flock Safetyは、全米に少なくとも8万台のカメラネットワークを持ち、ナンバープレートをスキャンして警察や連邦機関が車両を追跡できるシステムを提供している監視テクノロジー企業です。LAPDは米国で3番目に規模の大きい警察組織であり、Flockにとっても最大規模の政府系顧客の一つとされています。
注目ポイント:相次ぐトラブルと他都市の動向#
複数都市での契約撤回#
LAPDだけではなく、カリフォルニア州マウンテンビューやメイン州サウスポートランドなど複数の主要都市もプライバシーへの懸念や、連邦移民当局がカメラを利用してサンクチュアリシティ(移民保護)政策に反する形で人々を追跡していたとの懸念を理由に、Flockとの協力を停止しています。
誤検知・冤罪リスク#
研究者たちは、ナンバープレート読取機の誤検知やエラーによって、ドライバーが警察に停車・拘束・銃を突きつけられたり、拘留されたりするケースが増加していることを記録しています。実際に、自動車レビューサイト「The Drive」の記者が試乗中の車両のナンバープレートをFlockカメラが誤って「盗難車」と認識し、数日間追跡された末に警察に包囲されるという事案も報告されました。
セキュリティ上の問題#
Flock Safetyはセキュリティ上の不備も複数指摘されています。独立系メディア「404 Media」が、一般公開状態になっていたFlockカメラの映像をリアルタイムで閲覧できることを実証した事案がありました。また、立法者からは、ハッカーやスパイがセキュリティカメラにアクセスするのを防ぐための措置が不十分であるとして、連邦消費者当局に調査を求める声も上がっています。警察ユーザーの多くのログインが多要素認証(MFA)で保護されていないことも問題視されています。さらに、米麻薬取締局(DEA)が地元警察官のパスワードを本人の知らないうちに使用し、移民法違反で訴追された容疑者の捜索に利用していたとも404 Mediaが報じています。
地域住民による抵抗#
ローカルコミュニティレベルでも反発は強く、一部の住民がFlockカメラを自ら取り外したり、ゴミ袋で覆うなどの行動に出ています。また、Flockが地元当局の許可なしにカメラを再設置したとする報告もあります。
Flock側の反応#
Flock Safetyの広報担当Holly Beilin氏はTechCrunchへのコメントの中で、今回の契約終了は「驚き」だったと述べており、契約終了に至った「誤解」を解消できると確信しているとの立場を示しました。ただし、どのような「誤解」を指しているのかについては言及していません。
まとめ#
LAPDによるFlock Safetyとの契約終了は、監視技術とプライバシー保護をめぐる緊張関係が、大都市レベルにまで波及している状況を示す象徴的な出来事といえます。誤検知による被害、データ管理の不備、セキュリティ上の脆弱性、さらには移民政策との絡みなど、問題は多岐にわたっています。
筆者の見解: 今回の件は「便利なテクノロジーであれば何でも導入すればよい」という時代の終わりを示しているように感じます。特に市民の権利に直接関わる監視システムにおいては、技術的な有効性だけでなく、データガバナンスやセキュリティ設計、そして地域の法律との整合性が不可欠な要件となりつつあります。他の自治体や企業にとっても、他人事ではないニュースでしょう。




