
UberとWaymoがビジネスパートナーでありながら「敵対」する事態に#
Uberが自律走行車(AV)の規制ルール形成に積極的に乗り出し、投資・提携パートナーであるWaymoと真っ向から対立する構図が浮かび上がった。舞台は、ワシントンD.C.で審議中の自動運転車に関する新法案だ。
法案の概要:D.C.で無人ロボタクシーを解禁するか#
問題の法案は、評議員チャールズ・アレン氏が2026年5月に提出したもので、2012年に制定された既存の自律走行車法(Autonomous Vehicle Act of 2012)を改正する内容だ。現在、ワシントンD.C.ではWaymoやZooxといった企業が自動運転車のテストを行えるが、安全要員として人間のドライバーを同乗させる義務がある。
新法案が可決されれば、D.C.交通局(DDOT)がAV開発企業に対して「無人でのテスト・商業運行」の許可を発行できるようになる。許可取得には以下の条件が求められる。
- 最低500万ドルの賠償責任保険の保有
- 事故データの報告義務(商業フリートは8時間以内、個人所有AVは72時間以内)
さらに、ロボタクシーには走行距離1マイルあたり0.15ドルの課税が課される。この「VMT税(走行距離税)」の収益は、50%が公共交通機関に、残りがライドシェア・タクシードライバーの教育や労働力開発支援に充てられる仕組みだ。ただし、ロボタクシー推進派からはこの税率が高すぎるという声が上がっている。
Uberの戦略:「ハイブリッドネットワーク」の義務化を主張#
Uberはこの法案に反対の立場を取っている。Uberの米国政策・連邦政府担当責任者であるハビ・コレオソ氏は、D.C.議会の円卓会議でロボタクシーの問題点を次のように指摘した。
- ロボタクシーは空走や停車による交通渋滞を引き起こす
- 高齢者や障害者への物理的なサポートが人間ドライバーのようにはできない
- 自動運転車1台が約4人のドライバーを失業させるというデータがある
Uberが提唱するのは「ハイブリッドモデル」だ。2026年5月に公表したホワイトペーパーで初めて示されたこのアイデアは、人間ドライバーと自動運転車が同一のプラットフォーム上で共存することを規制として義務付けるというものだ。Uberが2026年6月にD.C.議会に提出した書簡によれば、「ユーザーがAV対応市場でUberを呼ぶと、旅程の内容に応じて自動運転車か人間ドライバーのいずれかにマッチングされる」という運用が想定されている。
Waymoの立場:法案支持、Uberの解釈には反論#
Alphabet傘下のWaymoは、この法案を支持している。Waymo側は、法案が自動運転車の安全な展開を可能にしつつ、公共交通支援・公平なアクセス確保・労働者保護を両立できると主張。また、Uberが主張する「法案がハイブリッドネットワークを事実上禁止する」という解釈にも異議を唱えている。Waymoの代表者は、異なる種類のネットワークが運用できるよう明確化する修正は歓迎すると述べており、特定ネットワーク形態へのAV限定化を支持していないとしている。
UberとWaymoは月曜日に行われる終日の公聴会でそれぞれの主張を展開する予定だ。法案の可決は今すぐではなく、関係者の多くは2027年1月にムリエル・バウサー市長が退任する前、年内の成立を目指している。
なぜこの対立が重要なのか:業界全体への影響#
このD.C.の政策論争は、単なる地方議会の話にとどまらない。
Uberの現在地: UberはAV技術企業30社以上に投資・提携するほか、AV開発者にリアルワールドの走行データを提供する新事業部門「AV Labs」を立ち上げ、エンジニアを積極採用している。一方で、ロボタクシーを自社プラットフォームに取り込む規制の義務化を推進することで、市場での主導権を保持しようとしている。
もしUberのハイブリッド義務化が実現したら: WaymoなどのAV開発者は、Uberのようなライドシェアアプリにロボタクシーを載せるか、人間ドライバーと共存する形での運行を強いられる可能性がある。
もしWaymo支持派の法案が通ったら: Uberは主張するところによれば、市場から締め出されるリスクがあるという。
この法案には、TeslaやLyftの代表者、チームスターズや全米サービス業従業員国際組合(SEIU)などの労働組合、障害者権利・アクセシビリティ擁護団体、道路安全推進団体、シンクタンクなど多数の関係者が関与しており、利害関係の複雑さを示している。また、「Coalition for Accountability and Road Safety」という団体による反ロボタクシーキャンペーンも展開されているが、その資金源は不明だ。
まとめ#
ワシントンD.C.の自動運転車法案は、ロボタクシー産業の未来を占う試金石となっている。週50万件以上の配車を11都市で提供するWaymo(最大のロボタクシー事業者)と、米国最大のライドシェア・配達ネットワークを持つUberが、規制の枠組みをめぐって激しく対立している。
筆者の見解: D.C.の結果がどちらに転んでも、その影響は全米の自動運転規制論議に波及することが予想される。Uberが単なる「投資家・パートナー」の立場を超えて、規制形成そのものに関与し始めたことは、ライドシェアと自動運転の共存モデルを考える上で、業界が注目すべき重要な転換点と言えるだろう。
出典: Uber’s robotaxi lobbying effort puts it on a collision course with Waymo (TechCrunch, Kirsten Korosec, 2026年7月13日)





