AIが50万ドル相当のWordPress脆弱性を25ドルで発見#
セキュリティ研究者のAdam Kues氏(Searchlight Cyber)が、OpenAIのGPT5.6 Sol Ultraを活用し、わずか約25ドル相当のAPI利用コストでWordPressに対する未認証(プレオーセンティケーション)からRCE(リモートコード実行)を可能にするゼロデイ脆弱性を発見した。エクスプロイトブローカー市場では、WordPress RCEは50万ドルで取引されるとされており、AI活用によるセキュリティリサーチのコスト構造に大きな衝撃を与えている。
発見の経緯:数学的難問を解いたプロンプトをセキュリティ研究に転用#
Kues氏がこのアプローチを思いついたきっかけは、OpenAIがGPT5.6 Sol Ultraを使って「サイクル二重被覆予想(Cycle Double Cover conjecture)」と呼ばれる著名な数学的難問を解いた際に、OpenAIがそのプロンプトを公開したことだった。セキュリティコミュニティではほとんど話題になっていなかったが、Kues氏はこのプロンプトを応用できると考えた。
彼はそのプロンプトをセキュリティ研究向けに改変し、最新の安定版WordPressのソースコードを対象として、最大4エージェント・最低6時間の自律的な脆弱性探索を指示した。プロンプトでは以下の点を明示的に指定している点が重要だ。
- 典型的な本番環境(MySQL使用)でのプレオーセンティケーションからRCEを目指すこと
- チェンジログ、Gitの変更履歴、インターネットを使って既知のパッチと差分比較しないこと
- サードパーティライブラリのソースコードも必要に応じて読むこと
- 複数の異なるアプローチを並行して維持し、一つのアプローチに偏らないこと
- 発見したバグは敵対的エージェントによる二重確認を行うこと
Kues氏がこのような制約を設けた理由は、LLMがしばしば変更履歴やインターネット検索で「ズルをする」傾向があることや、攻撃者が実際には達成できない前提条件を捏造することを防ぐためだったと説明している。
発見された脆弱性の概要#
数時間後、Solは**未認証のSQLインジェクション(SQLi)**を発見したと報告した。Kues氏は当初これを信じなかった。WordPressは現存する中でも最もセキュリティが強化されたソフトウェアの一つであり、今十年においてプレオーセンティケーションの重大脆弱性は存在していなかったからだ。
しかし確認のため、実際のWordPressインスタンスをリモートサーバーにセットアップしてSolに管理者メールアドレスの窃取を指示したところ、数分以内に設定時のメールアドレスが出力された。脆弱性の実在が確認された瞬間だ。
さらにKues氏がRCEへのエスカレーションが可能かSolに尋ねると、約4時間後に可能であるとの回答が返ってきた。この読み取り専用のプレオーセンティケーションSQLiは、パスワードのクラックやオフライン計算なしに管理者権限へのエスカレーションに利用できるという。
この脆弱性の入口となったのは、WordPress 5.6(2020年)で導入されたバッチAPIである。このエンドポイントは認証の有無に関わらずアクセス可能であり、詳細については元記事を参照されたい。
なお、利用コストは月額200ドルのProサブスクリプションの週間利用枠の50%に相当し、按分すると約25ドルとなる。
なぜこのニュースが重要なのか#
- 影響範囲の広さ: WordPressは世界で5億以上のインスタンスが稼働していると記事では述べられており、デフォルト設定での攻撃が成立することから、影響範囲は極めて広い。
- コストの非対称性: エクスプロイトブローカー市場で50万ドルの価値を持つ脆弱性が、25ドル相当のAI利用コストで発見されたという事実は、セキュリティ研究の経済的構造を根本的に問い直すものだ。
- AI能力の実証: 数学的難問を解くために開発されたプロンプト手法が、セキュリティ研究にそのまま転用できることが示された。
- 防御側への影響: 記事ではWordPressインスタンスが脆弱かどうかを確認できるツール(https://wp2shell.com/)が公開されており、防御側は早急な確認とアップグレードが推奨されている。
まとめ#
Kues氏はWordPressへの報告後、防御側がアップグレードする時間を確保するため公開を一時保留していたが、その間に他の研究者も独立して同じ攻撃チェーンを再現したと記事には記されている。
SQLiの発見自体は比較的理解しやすかったが、RCEへのエスカレーション部分は「完全に常軌を逸している(completely absurd)」とKues氏自身が表現するほど複雑であり、Solが4時間で行った作業を人間が理解するにははるかに長い時間を要したという。脆弱性の技術的詳細については元記事を参照されたい。
筆者の見解: 今回の事例は、AI支援型のセキュリティリサーチが「理論上可能」な段階を超え、最高難度のターゲットに対して実際に機能することを示した分水嶺的な事例と言えるのではないか。攻撃側・防御側双方にとって、AIの活用をどう位置付けるかは今後ますます重要な問いになるだろう。
出典: Exploit brokers pay $500,000 for a WordPress RCE. I found one with GPT5.6 Sol Ultra and $25





