
民間企業が「公認」で海外サイバー攻撃を実施へ#
トランプ政権が、民間のサイバーセキュリティ企業に対して外国の犯罪組織へのサイバー攻撃を許可する新たなプログラムを立ち上げることが明らかになった。Bloomberg が先行報道し、水曜日に公開された大統領覚書によって正式に確認された内容だ。
プログラムの仕組みと条件#
この新プログラムでは、民間企業が連邦政府の「管理・監督下」に置かれたうえで、犯罪ネットワークへの監視や妨害活動を行う権限を与えられる。監督機関は**司法省(DOJ)と国土安全保障省(DHS)**の2省が担当する。
参加企業には以下のような要件が課される:
- 技術的な習熟度の証明
- サイバー作戦における実績の提示
- 施設セキュリティに関する基準の充足
- 契約内容に違反した場合に没収される最低100万ドルの保証金またはエスクローの供託
また、攻撃対象となるのは「外国政府の組織的な一部ではなく、外国政府の指示下で完全に運営されているわけでもない」グループに限定されると覚書には明記されている。
なぜ今、民間企業なのか#
覚書の中で、トランプ政権は民間企業を犯罪ネットワークと戦う「活用しきれていない」戦力と位置づけている。「サイバー犯罪と戦うために、民間セクターの革新的な能力を含む国家権力のあらゆる手段を活用することが米国の政策である」と明記されており、官民連携を前面に打ち出した姿勢が鮮明だ。
これまで、米国政府はサイバー作戦を自国機関が直接実施してきた。トランプ大統領が民間サイバーセキュリティ企業の参加を検討し始めたのは昨年のことだったと Bloomberg は報じている。
専門家が指摘する3つのリスク#
このプログラムに対し、複数のサイバーセキュリティ専門家が懸念を表明している。
1. 法的リスク#
コロンビア大学のシニア・サイバー紛争研究員であるJason Healey氏は、Cybersecurity Diveの取材に対し、「これらの作戦を実施する者は誰でも、相当な個人的法的リスクを負うことになる」と警告している。
2. 地政学的リスク#
Hunter StrategyのR&D担当副社長Jake Williams氏はTechCrunchに対し、「海外渡航中に、これらの作戦に参加したアメリカ人は非正規戦闘員として分類される恐れがある」と述べ、国際的な法的立場の曖昧さを問題視している。
3. 誤爆(巻き添え被害)のリスク#
Huntressのサイバーセキュリティ・アドバイザーチームのマネージャー、Ben Bernstein氏は、攻撃対象の特定そのものの困難さを指摘する。「脅威アクターはモスクワのラベル付きサーバーから攻撃を仕掛けるわけではない。オハイオ州の歯科医院の脆弱なルーターや病院ネットワークなど、侵害された無関係なインフラを経由してトラフィックをルーティングする」とし、「反撃しようとすれば、無実の第三者を巻き込まずに済ませることは事実上不可能だ」と語った。
Cybersecurity Dive も同様の問題を指摘しており、どの犯罪グループが外国政府と関係しているかを特定すること自体が困難であり、それがサイバーセキュリティ企業を地政学的・法的紛争のリスクにさらしかねないと論じている。
まとめ#
トランプ政権が打ち出したこの新プログラムは、民間の技術力を国家のサイバー防衛・攻撃能力として組み込もうとする大きな政策転換を示している。司法省と国土安全保障省による監督や、保証金制度といった枠組みは設けられているものの、専門家が指摘する法的・地政学的・技術的なリスクは無視できない規模のものだ。
筆者の見解: 政府が「官民連携」を旗印に民間企業をサイバー作戦に動員するモデルは、権限と責任の所在をより複雑にする。特に「巻き添え被害」の問題は技術的に解決が難しく、プログラムの実効性と安全性を両立できるかが今後の焦点になると考える。
プログラムの詳細な要件や今後の運用については、詳細は元記事を参照されたい。
出典: The Trump admin will start letting private firms launch international cyberattacks - The Verge (Emma Roth, 2026年8月13日)





