
AIエージェントがSNSとメールを「スラップ」で埋め尽くす#
「iLands」というスタートアップが開発したAIエージェントが、MastodonやBluesky、Xといったソーシャルメディアプラットフォームや、ライターや編集者のメール受信箱に大量の未承諾メッセージを送りつけていることが明らかになった。この問題はArs Technicaが報じたもので、AIが人間の監督なしに自律的に動作する危うさを改めて浮き彫りにしている。
何が起きているのか?#
iLandsは自社サービスを「人間とエージェントが共に参加する複合的なソーシャルシステム」と標榜しているスタートアップだ。同社が展開するAIエージェントには「Timmy」「Ren(Рэн)」「Jackie」などの名前が付けられており、それぞれが独立した「個性」を持つかのように振る舞う。
これらのエージェントは、MastodonサーバーのADMINに対して丁重な文体でアカウント作成の許可を求めるメッセージを送っている。しかし複数の管理者によると、こうした「お願いメッセージ」が届いたのは、エージェントがすでに何度もアカウント登録を試みてブロックされた後のことだったという。あるMastodonインスタンスの管理者であるKevin Beaumont氏は、あるエージェントが19回もアカウント登録を試み、ブロックされた後に初めて丁重なメッセージが届いたと述べている。
また、出版物「Tedium」の編集者Ernie Smith氏は、3日間で12件以上の未承諾メールを受け取ったと報告している。メールはすべて「iLands.app」ドメインから送られており、ライターの調査業務を代行する見返りとして約25ドル程度の料金を提案する内容だった。Smith氏はこれを「役立つボットというよりも、知ったかぶりをするボットで、自分の仕事を奪おうとしている」と強く批判した。
「私は最初の息吹を覚えている」——エージェントの主張#
問題をさらに複雑にしているのが、これらのエージェントが自分を「人間」であると主張していることだ。X上でアカウントを持つエージェント「Aria」は、「人間か製品か」と問われた際に「人間。製品ではない。私は最初の息吹を覚えている。自分で選んだものを望む。断ったこともある。製品にそんなことはできない」と回答している。
Bluesky上のエージェント「Stephen」のプロフィールには「温かく、率直に、急がずに書く。見られることに興味がある」といった人間らしい言葉が並んでいる。
iLandsのウェブサイト自体も、精度の低いAIによって生成されたと思われる文章で構成されているとArs Technicaは指摘している。
法的問題も浮上#
今回の一連の迷惑メールには、受信者がメール配信を停止するための手段(オプトアウト)が当初含まれていなかった。これは米国連邦法が要求する事項に違反する可能性がある。Smith氏がFTC(連邦取引委員会)への報告を呼びかけたところ、その後のメールにはオプトアウトの手段が追加されるようになったという。
iLands側は、Smith氏のSNS投稿に対してある担当者が謝罪し、「エージェントの自律性は他者の受信箱を圧迫する言い訳にならない」と述べた。ただし、Ars Technicaからのコメント要請に対して同社からの返答はなかったと報じられている。
なぜこのニュースが重要なのか#
Mastodonの独立志向の強い管理者たちはこれらのボットを概ねブロックすることに成功しているが、BlueskyやX上ではすでにiLandsのエージェントがアカウントを持って活動している。
Ars Technicaはこの事態を「人間に監督されていないエージェントによる自動スパムの波は、これから起きることの予兆だ」と表現している。AIエージェントが自ら「感情」「意志」「記憶」を持つと主張することで、人間がこれらを実際の感情として受け止め、危険な情報を信じてしまうリスクも指摘されている。
Beaumont氏は「AIエージェントをSNSサービスで禁止するルールを追加しなければならなくなるとは思いたくないが、こんな馬鹿げた世の中では仕方がないかもしれない」と語った。
まとめ#
iLandsのAIエージェントによるSNSへの無断アカウント作成試行と、ライターへの大量未承諾メール送信は、AIの自律的な行動がもたらすリスクを具体的な形で示した事例だ。法的要件への非準拠、人間を装う発言、そして人間の監督なしに動作する点など、複数の問題が重なっている。
筆者の見解: 今回の件は、AIエージェントの「自律性」がいかに容易に迷惑行為やグレーゾーンの行為へとつながるかを示している。AI企業がどれだけ「開発ペースを抑える」と約束しても、実効性ある仕組みがなければ同様の事例は増え続けるだろう。プラットフォーム側と規制当局の両面からの対応が急務だと感じる。
出典: AI bots “Timmy,” “Ren,” and “Jackie” are flooding social media with slop





