
AIブームの「見えないゴミ」問題が深刻化#
AIの急速な普及がもたらす電子廃棄物(E-waste)の規模が、これまでの推計をはるかに超える可能性があると、新たな報告書が警告を発している。2050年までに、その量は40フィートコンテナ約2,300万個分、地球を6周できるほどの規模に達するという試算だ。
報告書が示す衝撃的な数字#
非営利団体「Basel Action Network(BAN)」が2026年9月16日に発表した報告書によると、2025年から2050年の間にAI関連機器から生じる電子廃棄物の総量は、3億9,500万〜6億1,700万メトリックトンに上ると予測されている。年間換算では約860万〜1,310万メトリックトンの機器が廃棄される計算だ。
さらに、世界全体の電子廃棄物量は2050年までに現在の3倍、年間最大2億1,100万メトリックトンに達すると予測されており、そのうち15〜20%がAIに起因するものとされている。
また、BANはデータセンター容量1ギガワットあたり7万メトリックトンの電子廃棄物が発生すると試算。McKinseyの予測を引用する形で、2030年までにデータセンターの総容量が最大219GWに達するとしている。
なぜ従来の推計と大きく異なるのか#
過去の研究は、AIの電子廃棄物をサーバーやGPU(画像処理装置)に限定して試算していたため、規模が過小評価されていた。BANの報告書によれば、こうした従来のアプローチではデータセンターが持つ電気機械インフラの約87%が計上されていなかったという。
今回の報告書では、以下のカテゴリも廃棄物の対象として新たに加えている:
- 電力供給・配電設備
- 冷却システム
- バックアップ電源設備
- ネットワーク機器
さらに注目すべきは「AI廃棄物汚染(AI Waste Contagion)」という概念だ。これはAIの進化によって陳腐化・早期交換が促される通信インフラや個人用デバイスまでを含む、広範なカテゴリを指す。
参考として、2024年に発表された別の研究では2030年までのAI由来の電子廃棄物を120万〜500万トンと予測しており、また2026年2月に発表された別の研究では、AIサーバーが年間13万1,000〜22万5,000トンの電子廃棄物を生み出す可能性があるとしていた。いずれもデンマーク一国が生み出す電子廃棄物に匹敵するレベルだが、BANの新試算はその規模をはるかに上回る。
電子廃棄物が引き起こす深刻な健康・環境リスク#
電子廃棄物の問題は量だけではない。世界で年間に発生する6,830万トンの電子廃棄物のうち、正式なルートで回収・リサイクルされているのは4分の1未満だ。残りの大半は非公式な廃棄ルートへと流れ、機器の焼却や埋め立てを通じて鉛やクロムなどの有害物質が作業員や周辺環境に曝露する危険がある。
世界保健機関(WHO)によれば、こうした非公式リサイクルの周辺で生活・就労を強いられる子どもたちが健康被害にさらされているという。
米国はデータセンターの数が世界最多でありながら、有害廃棄物の国際取引を規制するバーゼル条約を未だ批准していない。調査報道によれば、米国のリサイクル業者が電子廃棄物を海外に輸出し、それが「裏庭リサイクル」と呼ばれる非公式処理に流れているケースもあるとされている。
まとめ#
BANのJim Puckett氏が「AIは軽量に感じられるかもしれないが、あらゆるモデルは膨大な量の高度に専門化された最先端ハードウェアに依存している」と指摘するように、デジタル空間の「重さ」は現実世界に確実に存在する。報告書は、企業と各国政府が今すぐ廃棄物対策の計画を始めなければ、AIの拡大が「さらに破壊的な有害廃棄物危機」につながる可能性があると警告している。
筆者の見解: AIインフラへの投資競争が加速する一方で、廃棄物処理という「後始末」の議論は後回しにされがちだ。BANの報告書が示すように、サーバーやGPUだけでなく周辺インフラ全体を視野に入れた廃棄物戦略の策定が、業界全体に求められる段階に来ていると感じる。
出典: The AI data center e-waste problem is huge — and getting bigger





