
連邦機関がcomma.aiの運転支援システムを正式調査へ#
米国の道路交通安全を管轄する連邦機関・NHTSA(国家高速道路交通安全局)が、aftermarket(後付け)型ドライバー支援デバイスメーカーのcomma.aiに対する調査を開始した。複数の死亡・負傷事故が報告されたことが直接の契機となっている。
何が起きたのか——5件の事故、死者3名・負傷11名#
NHTSAの欠陥調査局(Office of Defects Investigation)が把握しているだけで、comma.aiのデバイスを使用中のドライバーが関与した衝突事故は5件に上る。
- 死亡事故: 2件の事故で合計3名が死亡
- 負傷者: 4件の事故で11名が負傷(一部は重傷)
事故のパターンとして目立つのは、「停車中または低速で走行している車両への追突」だ。少なくとも2件は停車中の車両への衝突で、そのうちの1件は緊急車両(ファーストレスポンダーの車両)に追突し、3名が死亡した。また別の1件では、合流中の車両への衝突も確認されている。
NHTSAはさらに、事故発生時にどのバージョンのソフトウェアが動作していたかにも注目している。少なくとも2件は、公式のメインビルドではなく派生版(フォーク)が使用されており、死亡事故を引き起こした車両では「FrogPilot」と呼ばれるバージョンが動いていたことが判明している。
comma.aiとは——George Hotzが手がける後付け運転支援システム#
comma.aiは、iOSのジェイルブレイクやSony PlayStationのハッキングで名を馳せたGeorge Hotz氏が立ち上げた企業だ。Hotz氏は2015年頃から部分的な自動運転支援技術に着目し、まず自身のAcuraを改造して手放し運転を可能にするシステムを開発した。当初はそのシステムをTeslaに販売することを目指していたという。
同社は2016年にNHTSAから問い合わせを受けたことを機に、ODB(車両診断)ポートに挿すデバイスの直接販売を断念。代わりに、ソフトウェア「openpilot」およびハードウェアの設計図をGitHubで公開し、誰でも自作できる形に切り替えた。
当初はAcuraとHondaの各1モデルのみをサポートしていたが、2020年には同社の$999のデバイスとソフトウェアがConsumer Reportsの評価でOEM(自動車メーカー純正)システムを上回るスコアを獲得するまでに成長した。
現在、最新モデルの「Comma Four」は以下の機能を提供するとしている。
- 車線中央維持(レーンセンタリング)
- アダプティブクルーズコントロール
- クラウドベースのドライブレコーダー機能
対応車種は27ブランド・325車種以上に及び、3万人以上のドライバーが利用。累計走行距離は**4億200万マイル(約6億5000万km)**に達している。
調査の核心——低速・停止車両の検出能力に疑問符#
NHTSAが問題視しているのは、comma.aiのシステムが低速または停車している前方車両を十分に検知・対応できているかどうかという点だ。今回の事故パターンがいずれも「停車・低速車両への追突」に集中していることが、この懸念を裏付けている。
また、死亡事故を含む複数のケースで「公式ビルドではなくフォーク版」が使われていたことも、調査を複雑にしている。オープンソースとして公開されているため、ユーザーが独自に改変したバージョンを使用することが可能であり、NHTSAはそれぞれの事故時に動作していたソフトウェアの特定を進めている。
まとめ#
NHTSAによるcomma.aiへの調査は、後付け型ドライバー支援システム全体に対する規制当局の関心が高まりつつあることを示す重要な動きだ。openpilotはオープンソースとして広く普及しており、その利便性と柔軟性が評価される一方、今回の事故はシステムの安全性――特に停車・低速車両の検出という基本的な機能――に疑問を投げかけている。
筆者の見解: オープンソースの運転支援システムは、誰でも改変・利用できる自由度が強みである反面、フォーク版のような非公式ビルドの品質管理が難しいという構造的な課題を抱えている。今回の調査はそのトレードオフを浮き彫りにするものといえるだろう。今後の調査の進展と、NHTSAがどのような結論を出すかに注目が集まる。
出典: Aftermarket driver assist under federal probe following fatal crashes - Ars Technica





